粘性底層
ねんせいていそう
説明
粘性底層は、乱流境界層の壁面直近に存在するごく薄い層で、流れがほぼ層流挙動を示す領域である。壁面では無滑り条件により流速がゼロとなり、そのすぐ上では粘性効果が支配的なため、乱流の渦も極めて小さくなって粘性によって平滑化され、実質的に層流のような速度分布となる。粘性底層の厚さは壁面法座標でおよそ \(y^+ \approx 5\) 以下程度とされ、その上には遷移層(バッファ層)を経て対数則に支配される乱流コア領域が広がる。粘性底層では、壁面せん断応力は粘性による線形勾配で決まり、速度勾配は大きい。熱的にも、熱境界層において粘性底層では熱輸送は熱伝導が主体となる。乱流モデルの壁面処理では粘性底層まで格子で解像する手法(Low-Reモデル)と、壁面関数で境界層内部を仮定する手法がある。粘性底層の存在は、壁面摩擦抵抗や伝熱面の熱流束計算に直接関与し、表面粗さの影響評価などにも重要である。