ボルツマン方程式

説明

ボルツマン方程式は、流体を分子レベルで捉える統計力学に基づく基礎方程式で、分子速度分布関数の時間発展を記述する。衝突項を含む非線形な輸送方程式であり、分子間衝突による速度分布の緩和と、外場下での移動を統一的に扱う。ナビエ–ストークス方程式はボルツマン方程式を分子自由行程が極めて短い極限で展開し、流体の巨視的量に対する連続体近似を行ったものである。ボルツマン方程式自体は6次元(空間3次元+速度空間3次元)と時間の変数を持つため解析解は少なく、数値的にも直接解くのは困難だが、モンテカルロ法(DSMC)による粒子シミュレーションや格子ボルツマン法(LBM)などで近似解が求められる。ボルツマン方程式はクヌーセン数が中程度から高い領域(気体分子が希薄な領域やマイクロ流路)でナビエ–ストークス方程式に代わって用いられ、真空工学や大気高層圏、MEMSデバイスのガス流れ解析などで重要となる。