高揚力装置
こうようりょくそうち
説明
高揚力装置は、航空機が離着陸時など低速で十分な揚力を得るために主翼に設けられる装置の総称である。代表的な高揚力装置には、主翼前縁をせり出すスラット(前縁フラップ)や、主翼後縁から展張するフラップ(後縁フラップ)がある。スラットは高迎角時の翼前縁剥離を防ぎ失速迎角を増大させる役割を果たし、フラップは翼の有効キャンバーと面積を増加させて揚力係数を大幅に高める。これらの装置により、揚力係数の増加に伴い失速速度が低下し、離着陸距離の短縮が可能となる。一方、作動時には抗力も増えるため、必要時のみ使用され巡航時には収納されるようになっている。高揚力装置の設計は、複雑な流れ(境界層の剥離防止、スロット効果など)を伴うため風洞試験や数値シミュレーションで最適化され、航空機の安全な低速性能確保に不可欠な技術となっている。